うんふぁく劇場(仮)

第1回 秋月くんと入江さん

――学校 朝のホームルーム――

「え~、今日は転入生がいます。あ~、じゃ、自己紹介して。」

「秋月明(あきつきあきら)、趣味は寝ることです。よろしく」

「ん~、とりあえずあそこの席が開いてるから、そこでうんたらかんたら」

「はい」

「あ~、それじゃ出血の確認を行う。秋月……は居るよな。入江」

「はい」

「宇佐美」――

――昼休み――

(前の学校より若干授業の範囲が違うな…今度予習しておかないと。)

「あ~秋月、それと入江、ちょっと来い」

「なんですか」

「入江、お前クラス委員だったよな、秋月に学校を案内してやってくれないか」

「わかりました」

「……」

「あ、え~と……、秋月です。よろしく。」

「入江衣里耶(いりえいりや)。学級委員。それじゃあ案内するからついてきて。」

「あぁ」

「……」

「……」

 

「ここ、学食。ごはん食べるところ。」

「お、おう」

「じゃあ私これ」

ピッ

「えっ」

入江は券売機にお金を入れ、ボタンを押したようだ。

(案内するんじゃなかったのか…?)

「秋本君は何にするの?」

「えっ…えーと」

「チッ」

「え…」

「券売機の前で悩むと舌打ちされるから選ぶときは入り口の横にある食品サンプル見て決めるといいよ」

「えぇ…」(じゃあ適当にこれで)

二人は食事を受け取り、4人がけの席に座った。

「…」

「何?」

「いや、学校案内してくれるんじゃなかったのかなと」

「先にご飯食べないと、間に合わなくなる。」

「まぁ、そうだね」

「…」カチャカチャ

「…」カチャカチャ

「…」カチャカチャ

「…」

(食うのおせぇ)

――数十分後――

「…」

「…」

「じゃぁ、次は」

キーンコーンカーンコーン

「予鈴鳴ったから、あとは明日。」

「お、おう…」

(いや、飯は毎日食うんだからそれで時間終わったら一生案内できないだろ…)

「…?」

(大丈夫なのか…こいつ。)

第2回 宇佐美さんと襟沢さんと居辺さん

「秋月くんだっけ、あの転校生と入江さん、最近いつも一緒にご飯食べてるよね。
二人付き合ってるのかな?」

「え、マジぃ?あの転校生、割とイケメンだからちょっと狙ってたのに。」

「いやエリ、その発言はちょっとないと思う」

「え〜、居辺さんはどう思う?」

「……」

「そっか〜」

(その振りは何…?)

「そういえばうさぎは貝沢とどうなの?」

「え、ど、どうって別に何もないから!」

「つ〜かさ〜、アレのどこがいいの?」

「…は?」(半ギレ)

「居辺さんはどう思う?」

「……」

「そっか〜」

(…何が?)

「で、どうして好きになったの?」

「だ、だからそういうのじゃないって!」

「じゃあさ、居辺さん的には貝沢とかどうなの?」

「えっ!」

「……」

「そっか〜」

(この二人の間で一体何が伝わってるんだろう…)

第3回 貝沢くんと清田くん

――数ヶ月前――

「これからどうする?」

「そうだな、腹減ったし隣町のマ○ク寄ってこうぜ。」

「え、なんでわざわざ隣町まで、そこのサ○ゼじゃだめなのか?」

「いいからいいから」

――マ◯ク前――

「さて、そろそろ話しておくか。わざわざ少し離れたここマ○クに来た理由だが…」

「はぁ」

「このマ◯クにはこの時間、宇佐美がバイトしているらしい。襟沢に聞いた。」

「え…冷やかしじゃん。」

「そこで…だ。」

「……」

「……」

「ジャンケンで負けたらスマイル0円注文な!最初はグー!」

「えっ、ちょ」

「ジャンケンショッ!」

「……負けた。」

「じゃ、そういうことで。俺後ろで見てるから。」

「いや、マジでやるんですか…」

「は?お前、ジャンケンに参加したよなぁ???」

「くっ」

「つまりお前は勝ったら俺にその罰ゲームを受けさせるつもりだったわけだ。言いたいこと、わかるよなぁ?」

「わかったよ!行くよ! ……はぁ。」

「悲しきかな、罰ゲームを賭けた勝負に乗るのは、男子高校生という群れの中の鰯が持つ性(さが)なのだ。」

――店内――

(また店長に怒られちゃった… 最近いつも失敗ばかり… はぁ… 私ってなんでこうなんだろ……)

(本当にやるのか…?)

(げっ同じクラスの男子達じゃん…もしかして冷やかしに来たのかな…でも仕事だしちゃんとしないと)

「ご注文お伺いします」

「えー…と、チキンフィレオとマ◯クシェイクのストロベリーSで。」

「チキンフィレオおひとつとマ◯クシェイクストロベリーSサイズおひとつでよろしいですね?」

(おい)

(わかってるよ!)

「あー……それと……」

「…?」

「ス…スマイル…一つ…」

「ぷッ」

「……」

「……」

(ああああああああああああああああああああああああああああああ申し訳ない申し訳ない申し訳ない申し訳ない申し訳ない)

「……ふ」

「あははっあはははははっ」

「!?」

(そうだ、いつまでも落ち込んでナイーブになっててもしょうがないんだ。貝沢くん、きっと私が最近元気ないのに気づいておちゃらけて気分をほぐしてくれたんだ。いつもそんなキャラじゃないのに)

「……」

「あ、ごめんなさい、チキンフィレオおひとつ、マ◯クシェイクストロベリーSサイズおひとつ、それとスマイルでよろしいですね?」ニコッ

「あ……はい……」

「合計で470円になります」

「はい」

「なんかウケててよかったじゃん」

「こんなこともうやらないからな……」

第4回 秋月くんと入江さんと居辺さん

キーンコーンカーンコーン

――昼休み――

「……」

「……」

「じゃあ、案内するから。」

「あ、あぁ…」

(なぜ俺は毎日こいつと昼食を共にしているんだ?)

(いや、別に一緒に食わなくても一人で食うだけだし、それ自体嫌というわけでもないのだが、なんというか、不毛だ。あと気まずい。)

(なにより、この状況を受け入れることは、なんか自分の立場を利用して女の子にお近付きになっているようで、結構ダサくない?)

「……?」

(彼女がこの状況をどう思っているのかわからないが、彼女の時間を束縛し続けていることにはかわりない。)

(ここはキッパリと案内はもう不要だと言っておいたほうがいいのではないか)

「あ、あの…」

「……」

「あ、織葉ちゃん。」

「……」

「……」

「ご飯、一緒に食べる?」

「えっ」

「……」コクコク

「……」チラッ

(そうだ、この流れを利用してとりあえずこの場を離れよう)

「あ、あぁ。えーと、じゃあ、俺はこれで」

「…!」フルフル

「織葉ちゃんは一緒でもいいみたい。」

(えぇ…なんか俺、ハブにならないよう気を使われてる…)

(俺的には知らない女子とご飯食べるのってかなり気まずいんだけど……まぁ……いまさらだが。)

「あぁ~、いや、その。」

(つーかこれ、無理に断ったら逆に失礼になるのでは…)

「じ、じゃあ、ご一緒しようかな…」

「……」

「……」

「……」

――食堂――

「……」

「……」カチャカチャ

「……」カチャカチャ

(なんだこのお通夜みたいなのは……)

第5回 国安くんと慶田さん

――放課後 掃除中――

「ん、他の奴らはどうした?」

「清田たちならあっちで箒振り回してますよ。」

「またあいつら掃除をサボって…。」

「まぁ貝沢は清田に振り回されてるだけっぽいですけど。」

「そうか…。国安は真面目で偉いな。」

「……」

「どうした?」

「いや、偉いのは掃除しなくていいアイツらなんですよ。」

「お前はそういう拗ねた所がなければ良い生徒なんだがな。」

「おい清田、貝沢、真面目に掃除やれー」

「……」

(偉い…か。)

(勤勉であったり、真面目であることは偉いことなのか?)

(人の言う偉いとは何か。)

(それは結局、自分にとって都合がいいように動かす煽て文句に過ぎない。)

「大した信条もなくただ周囲の顔を伺って合わせて生きることが偉いわけがない。ただそうしなければ落ち着かない。根っからの奴隷なんだよ、俺は。」

「は?なに。独り言?ウケる。」

「……」

(いたのかよ。)

――次の日 休み時間――

「ねぇ、エリ~。」

「おん?」

「大した信条もなくただ周囲の顔を伺って合わせて生きることが偉いわけがない。ただそうしなければ落ち着かない。根っからの奴隷なんだよ、俺は。」

「……」

「は?何それ。」

「国安の真似。」

「はぁ?国安マジかっこよすぎるわ。やべぇ。」

「だっしょ~?」

「ねぇ居辺さん~」

「……」

「大した信条もなくただ周囲の顔を伺って合わせて生きることが偉いわけがない。ただそうしなければ落ち着かない。根っからの奴隷なんだよ、俺は。」

「……」プルプル

(やめてくれ…)

登場人物名簿

秋月 明(あきつき あきら)
転入生。

入江 衣里耶(いりえ いりや)
クラス委員長。不思議ちゃん。

宇佐美 雨鷺(うさみ うさぎ)
清楚系ビッチ系メンヘラ系乙女。

襟沢 絵里香(えりさわ えりか)
軽い。

居辺 織葉(おりべ おりは)
無言。

貝沢 櫂(かいざわ かい)
陰キャ。

清田 潔(きよだ きよし)
陽キャ。

国安 邦光(くにやす くにみつ)
ひねくれ者。

慶田 恵子(けいだ けいこ)
イジり。

先生。

MOB。